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OR出身, 小売系データ分析

生産・サービスの効率性を測る包絡分析法(DEA):使い方を具体例で確認してみる

生産・サービスの効率性を測りたい

包絡分析法(DEA)を使うと、以下のような利点があります。

  • 包絡分析法を使えば、生産活動やサービス提供の総合的な効率性を「効率値」という1つの指標で判断できる。
  • 現状で、無駄になっている材料の量や、増やせそうな生産・サービスの量も数字で把握できる。

箇条書きの最初は、言い換えると、材料や設備を複数つかったとしても「効率値」という1つの指標で効率性を表すことができるということです。なぜこれが可能なのかというのを理解するのは少々時間を要しますが、ひとまず結果を解釈するのはそこまで難しくありません。それでは分析の流れを見ていきます。

分析例

分析用のデータを準備

3つの材料と2つの設備、2人の人員で完成品を作る例を考えてみます。

各回で費やされた材料や設備使用時間、作業時間が横向きに並んでいます。No.1の行を横に見ていくと、材料1を10、材料2を1・・・とあります。その行の最後には完成品が3とあります。これは、材料1を10、材料2を1・・・を使って、完成品を3作ったということです。これが回ごとに下向きに記載されています。

包絡分析法の結果

これに対して、包絡分析法を実施した結果が以下です。

この出力結果を使って各生産の効率性の優劣を比較していきます。解釈の仕方は以下です。

上図に従って、まずは効率値が1の生産から確認していきます。出力結果によると第1, 2, 3, 4, 8, 10回の生産は効率値が1です。

第1, 2, 3, 4, 8, 10回の生産は効率値が1

次にラムダ変数の値を確認すると、それぞれの生産のラムダ変数は自らのラムダ変数(下の図は赤丸)以外は0です。つまり、第1, 2, 3, 4, 8, 10回の生産は効率的で改善の余地はない、という解釈になります。

それぞれの生産のラムダ変数は「自らのラムダ変数(赤丸)」以外は0

一方で、効率値が1未満の第5, 6, 7, 9回の生産は非効率的です。

効率値が1未満の第5, 6, 7, 9回の生産は非効率的

効率値の値が小さい順に第6, 7, 9, 5回となっており、第6回の生産が最も非効率的、という解釈になります。ちなみに、包絡分析法では「非効率な第5, 6, 7, 9回の生産については、材料と設備使用時間と作業時間をそれぞれ(効率値)倍の値まで削減できたはず」という解釈も得られます。つまり、第5, 6, 7, 9回の生産の材料と設備使用時間と作業時間は、各回ごとに0.875倍, 0.6倍, 0.769倍, 0.846倍までに本来は抑えられたはず、ということです。

分析結果の解釈

注意点

包絡分析法の使い方を簡単に触れてきました。最初に述べたとおり、この分析法は生産・サービスの総合的な効率性を一つの指標で比較できる利点があります。しかし、いつでも使えるわけではありません。例えば、今回のモデルは「材料や設備、作業時間に比例して完成品の数が増えるはず」という仮定のもとで成り立つ点に注意する必要があります。このモデルを特にCCRモデルと言いますが、「材料や設備、作業時間を増やせば増やすほど、完成品の増加率が減少する」という仮定を採用したBCCモデルなど別のモデルがあり、生産・サービスごとに適切なモデルを選ぶべきです。

また、今回の計算例ではありませんでしたが、効率値が1でも非効率なこともあります。(その場合は、スラック変数の分だけ削減可能です。)

まとめ

包絡分析法(DEA)を使って、効率値を使ってまとめて効率性を比較する例を示しました。非効率な活動を特定するだけでなく、その改善に対して具体的な目標値を得ることができます。さらには、効率値を悪化させる要因を調べることで、製品・サービスの製造や提供により長期的な安定性が期待できます。

参考文献

刀根薫(1993)『経営効率性の測定と改善ー包絡分析法DEAによるー』日科技連.

データ

ブログ_DEA_サンプル_構想 (1).xlsx - Google スプレッドシート

ブログ_DEA_16Jan.xlsx - Google スプレッドシート

計算用コード

Google Colab