Noz

OR出身, 小売系データ分析

倒産確率推定の話①

倒産確率推定、まとめておきたい

  学部3年、ファイナンス・リスクマネジメントのゼミで半年かけて倒産確率についてグループで発表しました。 最近になって、会計方面から改めて倒産リスクを勉強したこともあり全体的に振り返ってみたくなりました。 AltmanのZスコアとMertonモデルについてまとめておきます。

Zスコア

 前者は財務データのうち倒産の予測に寄与しそうなものを説明変数として厳選し、倒産予測を行おうとするものです。倒産の予測に寄与しそうなものを選定する過程で、財務データそれ自体への理解が深くなければならないので会計学ベースのアプローチという印象を持っています。

Mertonモデル(オプション・アプローチ)

 一方、後者はブラック・ショールズモデルを基礎とするオプション評価式に基づいた予測モデルです。数理ファイナンス寄りのアプローチという印象です。それでは、Zスコアから見てみます。 f:id:Noooooz:20211124200246p:plain

アプローチ①:Zスコア

 例えば、財務情報から5つの説明変数を構成し判別分析を行います。具体的には以下のような説明変数です。*1

  •  X_1  = \frac{\text{working capital (運転資本)}}{\text{total assets (総資産)}}
  •  X_2  = \frac{\text{retained earnings (留保利益)}}{\text{total assets (総資産)}}
  •  X_3  = \frac{\text{earnings before interest and taxes (利子・税金の控除前利益)}}{\text{total assets (総資産)}}
  •  X_4 = \frac{\text{market value equity (株式時価総額)}}{\text{book value of total liabilities (総負債)}}
  •  X_5 = \frac{\text{sales (売上)}}{\text{total assets (総資産)}}

 このもとで、Altmanは以下のような判別関数を推定しました。


Z = 0.012X_1 + 0.014X_2 + 0.033X_3 + 0.006X_4 +0.999X_5

 ここで、 Z=2.675閾値として、これを下回ると倒産と判断する。ただし、検索で出てきた論文を見ると判別分析のモデルによって切片があったりなかったりすると述べています。それと、財務分析の入門書に平易な例による解説があります。*2。その例でも、ある程度高水準の判別力が得られるという説明がなされています。ただ、判別力の評価手法についてはいろいろ議論があるそうです。実際、あくまで印象ですが、2010年代の倒産確率の格付け予測の論文では少なくともAUCでの評価でモデルの性能を測っていると思います。

*1:E. I. Altman, https://pages.stern.nyu.edu/~ealtman/Zscores.pdf

*2:桜井(2021)「財務諸表分析」中央経済社. 第15章